カテゴリ: 認知症の最新研究

今回も認知症についての研究レポートです。

九州大学から長い年月をかけたレポートですので、大変意味のある興味深いレポートです。

 

雑誌:Neurology. 2020 Aug 04;95(5);e508-e518.

 

発表者:吉田 大悟(九州大学)

 

目的:日本のコミュニティ在住の高齢者における認知症の累積発症率とそのサブタイプを推定する検討を行った。

方法:コミュニティ在住で60歳以上の日本人高齢者1,193例を対象に、17年間前方視的にフォローアップを行った。認知症の累積発症率は?

結果:
①フォローアップ期間中に認知症を発症した高齢者は、350例であった(アルツハイマー病[AD]:191例、血管性認知症[VaD]:117例)。
②認知症の生涯リスクは、55%であった(95CI4960%)。
③女性の認知症の生涯リスクは、男性と比較し、約1.5倍であった。
 女性:65%(95CI5772%) 男性:41%(95CI3349%)
④男女別のADおよびVaDの生涯リスクは、以下のとおりであった。
 女性のAD生涯リスク:42%(95CI3550%) 女性のVaD生涯リスク:16%(95CI1221%)
 男性のAD生涯リスク:20%(95CI734%)男性のVaD生涯リスク:18%(95CI1323%)

考察:著者らは「日本人高齢者の認知症の生涯リスクは、50%以上であり、非常に高かった。現在の日本のコミュニティにおいて、認知症に起因する生涯負担は、計り知れないことが示唆された」としている。

この結果についても年度・年度によって変わってくると思われます。

もう数年前から先進国では、認知症の発生率が低下してきています。個々にはいろんな要素が関わってきますが、日本からも今後認知症の発生率が減少していくreportがでてくるのではないかと考えています。

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本日は高齢者の車の運転についてです。

認知症の患者さんに車の運転を止めていただくことは大きな問題です。
殆どの家族は、車の運転をやめていただきたいと話してくれますが、一部の家族で「認知症が進行するので、車の運転は続けさせたい。」と話される家族がいるのも事実です。

あなたの父親もしくは母親の「認知症の進行が進まないように周りに迷惑をかけてもいいものでしょうか?」とお尋ねしますが、概ね「それとこれは別問題」だと言い放たれています。

ここまで認知症高齢者の運転が問題視されているなか、少数のご家族でこのような意見があるのも事実なんです。

さて、そんな中高齢になって自動車の運転をやめた人は、運転を続けた人に比べて
「要介護となる可能性が約2倍高くなる」
筑波大などのチームがそんな調査結果を公表した。

高齢ドライバーによる事故が問題になる一方、「移動の手段を失うと、活動量が減って健康度が下がる」といわれており、指摘が裏付けられた形です。

 愛知県に住む65歳以上の男女約2800人に協力してもらった。
2006~07年時点で要介護の認定を受けておらず、運転をしている人に、2010年8月の時点で運転を続けているか改めて尋ね、認知機能を含めた健康状態を調べた。

 さらに2016年11月まで追跡し、運転継続の有無と要介護認定との関係を分析した。

 身体能力や認知機能が落ちれば、運転も難しくなりやすい。こうした事例が結果に混じらないよう、10年の調査後すぐに要介護となった人は除き、健康状態の違いが影響しないよう統計学的に調整して分析した。

 その結果、2010年時点で運転をやめていた人は、運転を続けた人に比べて要介護となるリスクが2・09倍あった。
 このうち、運転はやめても移動に電車やバスなどの公共交通機関や自転車を利用していた人では、同様のリスクは1・69倍にとどまっていた。一方、運転をやめて移動には家族による送迎などを利用していた人だと2・16倍だった。

 この結果はbiasが混じっているので、数字をそのまま信じることはできません。
意味合いについては納得できていますが、今後似たようなreportをお待ちしています。

 また、だからといって認知症の診断・治療をしている人が車の運転を容認することはできません。それこそ別の次元の問題と考えています。

地中海食

本日はアルツハイマー型認知症のリスクを軽減するためのライフスタイルの研究についてです。

このようなレポートは今までにもいくつかあり、決して新しいという漢字はしませんが、生活の中にもヒントありということだと思います。

 
最近では「癌より怖い認知症」と言われる人もあり、癌治療の状況が改善していること、認知症治療が変わらないことが主たる要因だと思います。

そんな状況だからこそ、予防と言うことだと思います。

著者:Klodian Dhana

 

雑誌:Neurology. 2020 Jun 17

 

タイトル:健康的なライフスタイルとアルツハイマー型認知症のリスク:2つの縦断的研究からの所見

 

要約:質の高い食事、定期的な運動といった健康的な生活習慣を複数組み合わせることで、アルツハイマー病のリスクを60%も低減できる可能性のあることが、約3,000人を対象にした観察研究から明らかになった。

対象: Chicago Health and Aging ProjectCHAP1,845人)とRush Memory and Aging ProjectMAP920人)の2つのデータ。

 

健康的な生活習慣:1)週150分以上の中等度から強度の運動、2)禁煙、3)少量から中等量の飲酒量、4)質の高い地中海-DASH食の摂取、5)高齢者向けの認知活動の実践、の5つを設定し、参加者がこれらをいくつ達成できているかをスコア化した。

結果:CHAP5.8年、MAP6.0年に及ぶ追跡期間(中央値)の間に、それぞれ379人、229人がアルツハイマー病を発症した。

解析の結果、上記5つの健康的な生活習慣のうち01個しか達成していなかった人に比べ、23個達成していた人はアルツハイマー病リスクが37%低く、45個達成していた人は60%低くなることが明らかになった。

考察:①改善可能な行動を組み合わせることで、アルツハイマー病のリスクを低減できる可能性があることを示す新たなエビデンスとなる。この研究から、健康的な生活習慣とアルツハイマー病のリスク低下との関連が強化されただけではなく、介入措置によるアルツハイマー病の発症予防や発症遅延の可能性を調べる比較臨床試験の実施も視野に入ってきたと述べている。

NIA神経科学部門のプログラムディレクターを務めるDallas Anderson氏は、「この研究は、アルツハイマー病リスクにおいて、複数の因子がどのように関与するかを明らかにする上で役立つ」と述べ、「明確な因果関係が示されたわけではないが、有力な結果だ」と付け加えている。

5つの生活習慣の詳細は以下の通り。


1)中等度から強度の身体活動を週に150分以上行う。NIAは、運動継続のための最善策について、かかりつけ医に相談することを勧めている。

2)禁煙を行う。何十年も喫煙を続けてきた60歳以上の人でも、禁煙すれば健康状態を改善できることが、研究により明らかにされているという。

3)飲酒量は少量〜中等量にする。適度な飲酒は脳の健康に役立つ可能性がある。

4)食事の内容に気を付ける。NIAは、認知症予防との関連が示されている、植物性食品を中心に摂取するMIND食(地中海食とDASH食を合わせたもの)が有益であるとしている。

5)高齢者向けの認知活動を実践する。読書、ゲーム、講座を受ける、新しい技能や趣味を学ぶなど、常に頭を働かせ、知的な行動を取るよう心掛ける。


本日はアルツハイマー病・レビー小体型認知症(パーキンソン病)などでは、症状が出現する前から匂いが感じられない、味がわかりにくいなどの症状が知られています。

 

また、現在問題になっています新型コロナウイルス感染症も感染初期から味・匂いがわかりにくい症状があるのが特徴的と言われています。これはウイルスが舌・口腔・咽頭に存在し、症状を出現させていると言われていて、唾液のPCRでも診断がつく理由も同じだと言われています。

 

今回はそんなアルツハイマー病患者の味覚障害についての研究論文についてのご紹介です。

 

雑誌:BMC Neurology2020/3/26


著者:河月 稔(鳥取大学)

目的:アルツハイマー型認知症(AD)もしくは軽度認知障害(MCI)患者と認知症でない対照群(NDC)における味覚機能や味覚に影響を及ぼす要因を調査し、認知機能障害と味覚機能との関連を評価した。

対象:AD29例、MCI43例、NDC14


方法:病歴および薬歴を収集し、唾液分泌量測定、認知機能検査、血液検査、全口腔法味覚検査、食事および味覚に関するアンケートを実施した。


結果:AD群は、NDC群と比較し、有意に高い認識閾値が認められた(p0.05)。
②多くは最大濃度でうま味を認識しておらず、これはNDC群と比較し、AD群またはMCI群においてより頻繁に認められた。
③認知機能検査以外の評価項目では、群間に有意な差は認められなかったが、多くは唾液分泌が減少し、血清亜鉛濃度が低く、多剤併用療法を受けていた。
④認識閾値と年齢(r0.229p0.05)および認知機能テストのスコア(r0.268p0.05)との間に有意な関連が認められた。

結論:著者らは味覚機能の障害は、ADでは認められたが、MCIでは認められなかった。しかし、MCIでも、うま味を認識しない人は多かった。認知機能低下を有する高齢者の味覚障害は、唾液分泌、亜鉛濃度、処方薬など味覚に影響を及ぼす要因とは無関係に認められることが示唆されたとしている。

現在、盛んに言われているアルツハイマー型認知症と味覚障害についての論文です。
概ね、今の常識とされている内容で大きな違いはないようです。
このような結果であるために、認知症になって料理が下手になったりするという事実が十分説明できるように思います。

鉄剤

本日は「認知症」と「貧血」の関係性についての論文になります。

雑誌:
Current Alzheimer Research(2020/3/16)

著者:Chien-Tai Hong(台湾・台北医学大学)

表題Association between Anemia and Dementia-A Nationwide, Population-Based Cohort Study in Taiwan.(
貧血と認知症の関連-台湾における全国規模の人口ベースのコホート研究)

目的:台湾全民健康保険研究データベースを用いて、新規に貧血と診断された患者における認知症リスクの調査を目的とした人口ベースコホート研究を実施した。

対象:脳卒中による入院歴および認知症以外の中枢神経疾患・精神疾患・外傷性脳損傷・大手術・失血疾患の既往歴がない貧血患者2万6,343例。人口統計および合併症に基づいて貧血患者と1:4でマッチさせた非貧血患者を対照群とした。貧血患者の認知症リスクの評価には、対照群と比較するため、競合リスク分析を用いた。

結果:
①貧血患者における認知症リスクの調整部分分布ハザード比(SHR)は、1.14であった。
②鉄分サプリメントを使用している患者では未使用の患者と比較し、認知症リスクが低い傾向にあった(調整SHR:0.84、95%CI:0.75~0.94、p=0.002)。
③サブグループ解析では、女性、70歳以上および、高血圧・糖尿病・脂質異常症でない患者において、認知症と貧血との相関が認められた。


結論:貧血は認知症のリスク因子であることが示唆された。鉄欠乏性貧血患者に対する鉄分サプリメント使用は、認知症リスクを低下させる可能性があるとしている。

貧血と認知症の因果関係は少ないがあるということです。積極的なリスクではないが、認知症がある中年期特に女性は、鉄剤サプリなどを内服して貧血の改善に努めておいた方がいいですよという論文です。

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