カテゴリ: 認知症の最新研究

Aducanumab

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本日は新しい認知症の薬「アデユカヌマブ」についてのお話です。

 外来でよく患者さんのご家族から新しい認知症の薬が出たんでしょう~?!と話を伺うことがよくあります。日本では2011メマリー・レミニール・リバスタッチテープ3剤が発売されて既に10経過していますが、現在のところ新しい薬の発売予定は全くありません。

 おそらく、新しい認知症の薬とは上の写真の「アデュカヌマブ」の事を言われているものだと思われます。今年67日に各新聞の1面にて、アメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)に承認された報道があったからだと思われます。FDAは日本では厚生労働省と同じ意味合いの政府組織ですので、アメリカで発売され使われるようになる。イコール日本でも使われるものだと思われても仕方ありませんが現実問題として、日本では承認審査中(つまり使えない状況)で、使える目途は全くたっていません。

 アルツハイマー病は、通常脳から排出されるアミロイドβというたんぱく質が蓄積し、神経細胞を壊すものと考えられます。この「アデュカヌマブ」は アミロイドβを取り除き、神経細胞を守ることでアルツハイマー病の進行を防ぐ効果があると期待されています。

 ところが、米国神経学会の見解では、この「アデュカヌマブ」は、脳内のアミロイドβを減少させるものの、認知機能の改善をもたらすかどうかは不明であると言われています。また、副作用としてアミロイド関連画像異常(amyloid-related imaging abnormalities; ARIAと呼ばれる治療に伴う脳内炎症のリスクがあり、それには脳出血が含まれる可能性があることやFDAが承認した用量を投与された人の3分の1においてARIAを生じるとも言われていて、無視できないほどの合併症と言えます。

 また、費用についてもアメリカでは「アデュカヌマブ」の薬剤費だけで年間56000ドル(日本円で約634万円・11/29現在)という超高額であるため、日本でそのまま13割負担の金額で使用できるとは到底思えません。それに加えて、潜在的な副作用や頻回なMRI検査によるモニタリングを頻繁に行う必要があり、頻回な受診の必要性があることも併せて考えないといけません。

 そうなりますと、
「アデュカヌマブ」1人の患者さんに使うとなると、1年間の医療費アメリカでは10万ドル(日本円で1132万円)を超える可能性があることを指摘しております。

 もちろん我々医療者側としても、現在の内服薬だけでなく選択肢が増えることが大変望ましいのですが、この状況から考えますとアルツハイマー病の早期の段階の人で、かつ通常の検査✙諸検査(アミロイドPET・脳脊髄液検査etc.)により、この新薬を使う患者さんがかなり絞られることになると思われます。
 2025には日本全体で730万人の認知症患者さんがいる推計になっていますが、その中のアルツハイマー病の患者さんで、かつ初期の段階の患者さんの一部に使用すると考えるのが妥当なのではないかと思われます。

20210608アデュカヌマブ 

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本日はこの話題です。
このブログでも何度も話題にしていた薬がついにアメリカのFDAで認可されました。

ということは日本でも今後認可される可能性が非常に高いと思われます。
昨日の株式市場でも「エーザイ社」の株を高騰し、ストップ高の状況になり、1日で19%ちかく上昇しています。

というのも、この薬が世界的に使われ出しますと、年間1兆円の売り上げになることが予想されているからです。

この薬は1年間で医療費として610万円かかると想定してある薬剤です。

現時点で日本では4種類の抗認知症薬に対して約1300億円の医療費が使われています。

この「アデュカヌマブ」に対しては、全ての認知症患者さんに使える薬ではありません。
「アルツハイマー型認知症」のみに使われる薬剤であり、その「アルツハイマー型認知症」でも初期の状況の患者さんのみしか使うことのできない薬と考えていいです。

ちなみに現在、既にアルツハイマー型認知症の診断を受け、抗認知症薬の投与が行われている患者さんは対象から外れると思って間違いありません。

現時点で日本でまだ認可されていませんので、認可されていると仮定して
①認知機能低下がわずかで、社会生活が普通に行えている
②アミロイドPET・タウPET(何れも自費で30万円程度)で陽性所見
③脳脊髄液などでの確認
④全身状況・採血などを併せて適応を検討する。

こういう手順を踏んで治療になります。
時間的な問題、経済的な問題も含めて対応できるケースに限られますので、使える患者さんは、それほど多くはないと考えます。

根治的な治療方法のない疾患だっただけに、「希望の光」であることは間違いありません。

今後の行く末に注目していきたいです。

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本日は日本におけるアルツハイマー型認知症の介護負担についての報告になります。

この問題は避けて通れません。

お金と時間と精神的な負担がかかります。

 

介護人が多ければ負担割合は減ります。

精神的にも楽になります。

 

経済的にも潤沢であれば、自分での介護を極限まで減らすことは可能です。

 

何れにしても、程度の差こそあれ、どこの介護をされている家族にとっては大きな問題になります。

 

雑誌:Journal of Alzheimer's disease : JAD. 2021;81(1);309-319

 

著者:Dr. 池田 俊也(国際医療福祉大学)

 

表題:Economic Burden of Alzheimer's Disease Dementia in Japan.

(日本におけるアルツハイマー病認知症の経済的負担)

 

(目的&対象)65歳以上の日本のアルツハイマー病患者を対象に、2018年度の年間医療費や介護費、さらに家族による個人的な介護ケアの費用や生産性の損失がどの程度かについて調査を行った。

(方法)文献レビューによるレポートを用いて、臨床的認知症尺度(CDR)スコアにより疾患重症度で分類したうえで、アルツハイマー病の医療費と介護費を推定した。
 介護に費やされた時間的コストは、2069歳のアルツハイマー病家族の介護による生産性の損失とすべての個人的な介護ケアの費用として算出した。


(結果)
①アルツハイマー病の総医療費は、1730億円であった。そのうち86%に当たる9,230億円は、アルツハイマー病の治療薬(1,510億円)以外の医療費であった。

②重症度別のアルツハイマー病の治療薬以外の医療費は、CDR-0.5(認知症疑い)、CDR-1(軽度)、CDR-2(中等度)では2,000億円未満であったが、CDR-3(高度)では4,470億円(48%)に増加した。

③公的介護費は、47,830億円と推定され、重症度に応じて増加が認められた。

2069歳のアルツハイマー病家族の介護による生産性の損失は、15,470億円であり、すべての個人的な介護ケアの費用は、67,720億円であった。

(結論)アルツハイマー病によるコストは、日本における公的医療費、介護システム、その家族に対し、多大な影響を及ぼしている。アルツハイマー病による経済的負担を最小限に抑えるために、健康寿命を延ばすための取り組みが重要となるとしている。

 

常識的な結果であります。

認知症の程度が強くなれば強くなほど、介護度で言えば要介護度が上がれば上がるほど、たくさんのお金と時間が必要になるわけです。

 

ですから健康寿命の延伸が最も大事なことになりますし、政府の認知症に対する予防施策についても大きなウエイトを占めるようになると考えます。

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子供頭部外傷

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今日は頭部打撲と認知症の関連についての最新報告です。

渡しは学生時代、柔道・ラグビーと頭部打撲のriskの高いsportsをしてきたので、そういう意味で大変興味深い話です。

雑誌:Alzheimer's & Dementia2021/3/9

著者:Dr. Andrea Schneider(ペンシルベニア大学神経学/米国)

要旨:1回でも頭部外傷の経験がある人は、後年に認知症を発症するリスクが25%高く、頭部外傷の受傷回数が多いほど認知症のリスクは上昇する。

対象:米国の観察研究であるARICAtherosclerosis Risk in Communities)研究に参加した14,376人の追跡データを解析した。ベースライン時の研究参加者の平均年齢は54歳、56%が女性であった。追跡期間中(中央値25年)には、定期的に対面または電話で頭部外傷に関する聞き取り調査を行ったほか、研究参加者の医療記録を用いて頭部外傷の既往歴も調べた。

結果:参加者における全認知症例の9.5%が、過去1回以上の頭部外傷に関連付けられることが明らかになった。頭部外傷の経験のある人とない人を比べたところ、経験が1回の人では、後年に認知症を発症するリスクが25%高く、経験が2回以上の人では、25年後に認知症を発症するリスクが2倍以上高かった。
 このほか、頭部外傷を経験した後に認知症を発症するリスクは、男性よりも女性で(ハザード比は1.151.69)、また黒人よりも白人で(ハザード比は1.221.55)高いことも示された。

考察:頭部外傷が認知症の発症を促し得るとしても、その機序は今のところ不明。「高血圧糖尿病、喫煙といった血管のリスク因子は、脳の血管の健康状態に影響を与え、後年の認知症を引き起こすと考えられている。頭部外傷も、それ自体が脳の血管に損傷をもたらし、似たような経路で後年の認知症を引き起こしている可能性があると推測。

結語:認知症のリスク因子には頭部外傷の他に高血圧糖尿病などさまざまなものがあるが、頭部外傷はヘルメットやシートベルトの着用といった行動変容により防ぐことができる。

非常に意義深い論文です。既にヨーロッッパでは13歳いかのサッカー選手にヘッディングを禁止しているという報告もあり、頭部外傷と認知症の関係性は非常に大きなウエイトを示しているものと考える。今後、日本を含む先進国においては、このような理由でサッカー以外の頭部外傷のriskが高いスポーツでは、risk管理が更に厳重になってくるのは間違いないと考えます。

 

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孤独感と認知症

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以前から
社会的孤独は認知症リスクをあげることが知られています。
言われてみたら当然ですが、刺
激のない生活であり、喜びの少ない生活ですから、決して認知機能に対して良い影響は与えないことが簡単に理解できます。

この研究は九州大学が長年研究している「久山町研究」からの研究結果になります。

 久山町研究は認知症の危険因子および防御因子を同定し、その発症リスクを低減することを目指しています。
 認知症のない高齢住民およそ1,000人を1985年から長期間にわたって追跡、ベースライン時の因子が認知症の発症にどのような影響を与えるかなどを検討しています。

 対象は65歳以上の高齢者1,141人を中央値で5.0年間追跡した結果、孤独感がある人ではない人に比べて認知症の発症リスクが1.5倍と有意に高まることが示された。

 また、同居していない親族や友人との交流頻度で層別して情緒的孤独感の有無と認知症発症の関連を調べたところ、交流頻度が月数回以上ある人では情緒的孤独感の有無にかかわらず認知症発症リスクに有意差は認められなかったが、交流頻度がほとんどない人では、情緒的孤独感の有無によって著しい差が見られ、情緒的孤独感がある人は情緒的孤独感がない人と比べて認知症の発症リスクが5.3倍高まるという結果でした。

 現在、国でまた各市町村で認知症対策をやっていますが、大変重要な指摘です。
 地域で独居の高齢者は、概ね把握できているようですが、どれくらいの活動を行っているかは把握できていません。草の根運動ではありますが、自治会・老人会・民生委員さんなどの手を借りて、孤独化している独居高齢者の調査をしていくことは非常に意義のあることではないかと考えます。

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