本日はアルツハイマー病・レビー小体型認知症(パーキンソン病)などでは、症状が出現する前から匂いが感じられない、味がわかりにくいなどの症状が知られています。
また、現在問題になっています新型コロナウイルス感染症も感染初期から味・匂いがわかりにくい症状があるのが特徴的と言われています。これはウイルスが舌・口腔・咽頭に存在し、症状を出現させていると言われていて、唾液のPCRでも診断がつく理由も同じだと言われています。
今回はそんなアルツハイマー病患者の味覚障害についての研究論文についてのご紹介です。
雑誌:BMC Neurology(2020/3/26)
著者:河月 稔(鳥取大学)
目的:アルツハイマー型認知症(AD)もしくは軽度認知障害(MCI)患者と認知症でない対照群(NDC)における味覚機能や味覚に影響を及ぼす要因を調査し、認知機能障害と味覚機能との関連を評価した。
対象:AD群29例、MCI群43例、NDC群14例
方法:病歴および薬歴を収集し、唾液分泌量測定、認知機能検査、血液検査、全口腔法味覚検査、食事および味覚に関するアンケートを実施した。
結果:①AD群は、NDC群と比較し、有意に高い認識閾値が認められた(p<0.05)。
②多くは最大濃度でうま味を認識しておらず、これはNDC群と比較し、AD群またはMCI群においてより頻繁に認められた。
③認知機能検査以外の評価項目では、群間に有意な差は認められなかったが、多くは唾液分泌が減少し、血清亜鉛濃度が低く、多剤併用療法を受けていた。
④認識閾値と年齢(r=0.229、p<0.05)および認知機能テストのスコア(r=0.268、p<0.05)との間に有意な関連が認められた。
結論:著者らは味覚機能の障害は、ADでは認められたが、MCIでは認められなかった。しかし、MCIでも、うま味を認識しない人は多かった。認知機能低下を有する高齢者の味覚障害は、唾液分泌、亜鉛濃度、処方薬など味覚に影響を及ぼす要因とは無関係に認められることが示唆されたとしている。
現在、盛んに言われているアルツハイマー型認知症と味覚障害についての論文です。
概ね、今の常識とされている内容で大きな違いはないようです。
このような結果であるために、認知症になって料理が下手になったりするという事実が十分説明できるように思います。
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